甕番号6番の特別キュヴェ。杏子、ビワ、柿などの落ち着いたアロマと果実味でクルミのようなクリーミーなテクスチャーを持ちます。お茶を煎じたような繊細なタンニンも魅力です。
生産者 パパリ・ヴァレー
産地 ジョージア/カヘティ
品種 ルカツィテリ 100%
色 オレンジ
味わい 辛口
ビオ情報 ビオロジック
年間生産量 2,000本
醸造・熟成 破砕・プレス後、チャチャ(果皮、茎、種:合計85%)とマストをクヴェヴリで約3週間(天然酵母/22度)、3.5カ月マセレーション/ワインだけを別のクヴェヴリにて2.3カ月熟成、更にランキングしNO6のクヴェヴリにて3カ月熟成
受賞歴
容量 750ml
≪生産者情報≫
パパリ・ヴァレーはジョージアの東、カヘティ地方アハシェニ・ヴァレーに2004年に設立された小規模の自然派ワイナリーです。畑から前方に見渡せる、広く長いコーカサス山脈の頂きは壮大で、訪れた旅人の心に残る、世界でも最も美しいワイン産地の一つと言えるでしょう。パパリ・ヴァレーが所有するブドウ畑は、波打つような穏やかな斜面に位置し、夏は暑く、冬は積雪のある大陸性気候に育まれます。設立当初2haの区画から始まったブドウ栽培は現在9.3haまでに拡大し、全て有機農法でブドウを大切に育てています。
「パパリ」とはジョージア語で「馬のたてがみ」を意味し、ラベルにはワイナリーのロゴでもある『馬』が描かれています。何とこの絵、オーナーであるヌクリ・クルダジ氏の息子、サンドロ君が7歳の時に描いた絵という点も、一家の芸術性の高さが見て取れます。
【他とは一線を画すクリーンなワイン】
パパリ・ヴァレーが造り出すワインは、洗練されたクリーン系のナチュラルワインです。濁ったワインも多いジョージアですが、その中でも特に「クリーンなアンバーワイン」として注目を集めています。パパリ・ヴァレーではこのスタイルを生み出すため、世界遺産となっているクヴェヴリでの古典的な醸造技術に現代の手法を取り入れ、保守的でありながらも革新的なワイン造りを行っています。正にジョージア産アンバーワインの未来を見せてくれる、そんな逸品と言えるでしょう。ワイナリーでは2006年より試験的にワイン造りが始まり、試行錯誤を繰り返し2015年に初ヴィンテージをリリースしました。まだまだ新しい造り手ではありますが、地元のワイン関係者だけでなく、既にマスター・オブ・ワインを始め、世界のワイン関係者が一目を置く、注目の造り手です。
革新的な醸造を行うパパリ・ヴァレーですが、2016年に完成したその施設も工夫がなされています。彼らのマラニ(クヴェヴリを置く施設)は、ジョージアで初めてクヴェヴリを3段階に分けて設置。1段目と2段目のクヴェヴリは1階に設置され、上部まで砂で埋められて温度管理ができるよう、クヴェヴリの周りに冷却水が流れるパイプを引いています。更に一番下の層にあたる3段目のクヴェヴリは、地下に設置して地中に埋められます。ここでの温度管理は、地中の安定した自然の温度環境に任せることです。
醸造手法は至ってシンプルで古典的です。天然酵母による醗酵を行い、醸造の各段階でポンプを使用せず、3階層になっているマラニの重力を利用してワインを移動させます。この結果、ポンプを使用することによるストレスを軽減し、ゆっくりと丁寧にワインを熟成させることが可能になります。
1段目のクヴェヴリは醗酵に使用され、2段目と3段目は熟成による目減り分の補充のために使われます。この方法を活用することで、若いワインの熟成に伴う自然な変化をもたらし、また微生物レベルでの汚染も防止する効果があります。
醗酵と醸し、熟成に使用されるクヴェヴリは、ジョージアの土を使いクヴェヴリ職人が窯で焼き上げた素焼きの壺です。古くは各地方にクヴェヴリを造る窯元がありましたが、時代の変化とともにその数は減り、現在では10社程に減ってしまいました。全てが手作業で製作される事から時間と熟練の技術、経験が必要な職業です。
窯元では職人がジョージアで採掘された粘土を練り、高さ10cm程の帯状の塊を作り、下から順に積み上げるように重ねては休ませ、乾燥させ、また積み上げる、という地道な作業を数週間かけて行い、大きな卵を逆さにしたような形状の壺を製作します。季節や湿度にもよりますが、完成した壺が高温で割れないように、1週間近く乾燥させ、数日から1週間かけて大きな窯で900-1200度の高温で焼き上げます。焼きあがったクヴェヴリは割れないようにゆっくりと冷まされ、内部には蜜蝋をコーティングして密度を上げることでワインの流失を防ぎます。更に側には強度を高めるために石灰やセメントが塗られます。ワインの蔵元によっては蜜蝋を好まない事から、あえて素焼きの物を購入する蔵もあります。クヴェヴリのサイズは様々で、小さいものから人が中に十分入れる程の大きなものまで一般的に使われます。サイズにすると数百リットルから数トン程で、現在ではその顧客はジョージア国内に留まらず、ヨーロッパ各国、更には日本へも輸出されています。
ドイツのアーヘンにあるフラウンホーファー協会(Fraunhofer Institute of Molecular Biology and Applied Ecology)での分子生物学と応用生態学の研究によると、伝統的なクヴェヴリで長期間スキンコンタクトを経たワイン(特に白ワイン)は、近代的な醸造方法で造られたワインよりも多くの抗酸化物質、フェノール類、タンニンを含有しているという結果が出ました。
このことから伝統的なクヴェヴリ製法のジョージアワインは自然に安定しており、タンニンが豊富なおかげで、多くの添加物を必要としません。
パパリ・ヴァレーでは、酸化防止のためボトリング前に僅かな量のSO2を添加するのみで、醸造プロセスでは出来る限り人の手を介さないことを重要視し、フィルタリングも行いません。
白ブドウの場合、天然酵母を用い果皮と共に醗酵・マセレーションを行います。この際、炭酸ガスにより浮上してきた果房は攪拌させ下に沈め、冷却水をクヴェヴリの周りにパイプで循環させ醗酵温度をコントロールします。温度管理をするクヴェヴリ醗酵はまだジョージアでは主流ではありませんが、この手法により正確にワインを醗酵させられるよう、パパリ・バレー独自の工夫がなされています。アルコール醗酵とマロラクティック醗酵が完了すると、ワインは次の階層の清潔なクヴェヴリへと移され、蓋を閉め密封し、そのまま果皮と共に約8カ月間熟成させます。
ワイン発祥の地として知られるコーカサス地方のワインに注目が集まっています。その中心となるのがジョージア(2015年まで日本ではグルジアと呼ばれていました)です。
コーカサス地方はジョージア、アルメニア、アゼルバイジャンの3国から成り、黒海(西)とカスピ海(東)の間に挟まれたコーカサス山脈と、それを取り囲む地域からなります。ジョージアは黒海に近い南コーカサス地域に位置する小国で、北にロシア、南東にトルコが隣接します。旧ソビエト統治時代も含め8000年以上もの間途切れることなくワイン造りが行われてきた、歴史的にも考古学的にも大変重要なワイン産地です。そして現在も500を超える貴重な固有品種が存在します。
ジョージアでは昔ながらのクヴェヴリを使った伝統的なワイン造りが今も大切に守り受け継がれていますが、ワインの近代化も進みヨーロッパ的なステンレスタンク等が持ち込まれたことで、ワイン造りも大きく変化を遂げました。この結果、今では全生産量の僅か10%程が伝統的なクヴェヴリを使用したワインです。現在のクヴェヴリは地中に埋められていますが、古くは地上にも置かれていたようです。しかし幾つかの大地震により多くが破壊されたことから、強度を高める事を目的にクヴェヴリを地中に埋めるようになりました。地中は温度が低く通年を通して安定しています。この結果、醗酵・醸しにも利点が多かった点も、地中での醸造が現在も続いている大きな理由と言えるでしょう。
そしてこのクヴェヴリでの醸造は、2013年12月ユネスコ世界文化遺産(人類の無形文化遺産部門)に登録されました。